「自治体に商品を販売したいが、入札に参加するしか方法がないのだろうか」「競争入札では価格競争になりやすく、他の販売方法も知りたい」
こうした企業にとって、知っておきたいのが随意契約です。
随意契約とは、法令で認められた場合に、競争入札によらず契約相手方を選定する契約方法です。自治体との取引は競争入札が基本ですが、実際には契約の金額や性質、緊急性などに応じて、随意契約が認められる場合があります。
ただし、随意契約は「希望する企業と自由に契約できる制度」ではありません。適用できる条件が定められており、企業が希望しただけで随意契約になるわけではないのです。
本記事では、随意契約の基本から、一般競争入札との違い、随意契約が認められる主な場面、競合企業との関係、価格の考え方、そして誰が契約方法を判断するのかまで解説します。
随意契約とは?
競争入札によらず契約相手方を選定する方法
随意契約とは、一般競争入札などによる競争手続きを経ずに、発注する自治体が契約相手方を選定し、契約を締結する方法です。
例えば、自治体が職員研修や業務用の物品を調達するとき、案件によっては競争入札を行わず、一定の条件に基づいて事業者を選定する場合があります。
地方自治体の契約方法は、地方自治法第234条に定められています。同条は一般競争入札、指名競争入札、随意契約、せり売りを掲げたうえで、随意契約などは政令で定める場合に限るとしています。

つまり、随意契約は自治体が利用できる正式な契約方法の一つですが、どの案件にも自由に適用できるわけではありません。
「好きな企業と自由に契約できる制度」ではない
随意契約と聞くと、「自治体の担当者に気に入ってもらえれば、入札なしで購入してもらえる」と考える方もいるかもしれません。
しかし、この認識は正確ではありません。
自治体が随意契約を行うには、法令上の根拠が必要です。さらに、案件の内容や予定価格、自治体の契約規則などを踏まえ、なぜその契約方法を選ぶのかを説明できなければなりません。
担当者が商品を高く評価していても、それだけで随意契約が成立するものではないのです。
自治体の契約は競争入札が原則
なぜ競争入札が基本なのか
自治体が商品やサービスを購入する際には、住民から預かった税金などの公金が使われます。
そのため、契約手続きには公平性や透明性、経済性が求められます。原則として競争の機会を設け、適切な条件で契約相手方を選ぶという考え方が基本になります。
一般競争入札では、必要な資格や条件を満たした事業者が入札に参加し、予定価格や案件に応じた落札者決定基準などに基づいて相手方が決まります。
一方、随意契約では競争入札によらないことが認められる理由が必要です。
随意契約は例外だが、制度として用意されている
随意契約が例外的な方法だからといって、特殊な商品にしか使われないわけではありません。
地方自治法施行令第167条の2には、少額の契約や、契約の性質・目的が競争入札に適しない場合、緊急の必要がある場合など、随意契約が認められる複数の類型が定められています。
重要なのは、「自治体への販売=必ず競争入札」と決めつけないことです。
商品やサービスの内容によっては、競争入札以外の調達方法を検討できる可能性があります。ただし、どの方式が適切かは、案件ごとに確認する必要があります。
どのような場合に随意契約が使われるのか
随意契約が認められる主な場面を整理すると、次のようになります。

1. 少額の契約を行う場合
予定価格が一定の金額以下である場合には、少額随意契約という方法が認められることがあります。
例えば、自治体が比較的少額の備品を購入する場合や、小規模な業務委託を行う場合などです。
ただし、少額随意契約の金額基準は全国で一律ではありません。
地方自治法施行令の別表第五では契約の種類や自治体の区分に応じた上限が示されており、各自治体はその範囲内で契約規則に基準額を定めます。2025年4月には国の基準額が引き上げられ、その後の自治体ごとの規則改正や適用時期にも違いがあります。
なお、「少額随意契約に当たること」と「必ず1社だけの見積りで契約できること」は同じではありません。金額が基準内でも、複数事業者から見積りを取る場合があります。
2. 契約の性質・目的が競争入札に適しない場合
契約する内容によっては、競争入札で相手方を選ぶことが適切でない場合があります。
例えば、既存設備との互換性や、特定の技術・権利などが問題となり、契約の目的を達成できる事業者が限られるケースです。
もっとも、「専門性が高い」「自社だけの特徴がある」と説明するだけで認められるわけではありません。
なぜ競争入札に適しないのかについて、案件の具体的な事情と法令上の根拠を踏まえた判断が必要です。
3. 緊急の必要がある場合
災害や事故などにより、競争入札の手続きを待っていては必要な対応が間に合わない場合には、随意契約が認められることがあります。
ただし、単に「早く購入したい」「年度末までに契約したい」という事情だけで、当然に緊急性が認められるわけではありません。
通常の競争手続きを行えないほどの必要性があるかが問題になります。
4. その他、法令で定められた場合
このほか、福祉や地域政策などに関わる特定の調達、競争入札で入札者がいなかった場合など、法令では複数の類型が定められています。
ただし、政策目的に合う商品だからといって、自動的に随意契約が認められるわけではありません。対象となる契約や手続きには、それぞれ異なる条件があります。
このように、随意契約は一つの条件で成立する制度ではなく、根拠となる類型によって判断基準が異なる契約方法なのです。
競合企業がいると随意契約はできないのか?
「競合がいる=必ず不可能」ではない
随意契約についてよくある誤解が、「同じ商品を扱う企業が他にも存在すると、随意契約はできない」というものです。
競争可能な案件では、特定の事業者を選ぶ合理的な理由を示すことが難しくなる場合があります。特に、契約の性質・目的を理由とする場合には、競争入札に適しない事情を慎重に確認する必要があります。
一方で、随意契約には複数の法令上の類型があります。そのため、競合企業が存在するという事実だけで、すべての随意契約が否定されるわけではありません。
大切なのは、競合の数だけで判断するのではなく、その案件がどの法令上の条件に該当するのかを確認することです。
競争を避けるためだけに随意契約を選ぶことはできない
随意契約は、競争入札を回避するための自由な選択肢ではありません。
自治体側が、法令上の根拠と案件の実態を確認し、適切な調達方法を判断する必要があります。
企業側に求められるのも、単に「競合より優れている」と主張することではなく、商品・サービスの内容や導入目的を客観的に説明できる状態にすることです。
随意契約でも価格の妥当性は確認される

随意契約なら希望価格で売れるわけではない
「入札がないなら、希望する価格で契約できるのではないか」と考える企業もあるかもしれません。
しかし、随意契約であっても、自治体は公金を適正に支出する必要があります。
契約内容や自治体の規則・運用に応じて、見積書の提出、複数事業者からの見積りの取得、過去の契約実績や市場価格との比較などが行われる場合があります。
価格が著しく割高で、その理由を説明できなければ、随意契約であっても契約につながるとは限りません。
価格だけでなく、相手方を選ぶ理由も必要
随意契約では、「その事業者と契約する理由」と「その価格が妥当である理由」は別の論点です。
例えば、専門的なサービスを提供できる事業者だと判断されたとしても、提示された金額の妥当性について確認が行われる可能性があります。
また、随意契約であっても、複数の事業者から見積りを取って比較する場合があります。
随意契約は価格の確認が不要になる制度ではなく、競争入札とは異なる方法で契約の合理性を確認する場合がある制度と理解することが重要です。
随意契約と一般競争入札の違い
両者の違いを整理すると、以下のようになります。
| 比較項目 | 一般競争入札 | 随意契約 |
|---|---|---|
| 契約相手方の選び方 | 資格・条件を満たす事業者による入札を通じて選定 | 法令上の条件に基づき、自治体が相手方を選定 |
| 競争性 | 入札参加者の競争を前提とする | 競争入札は行わないが、見積り比較等を行う場合がある |
| 適用条件 | 原則的な契約方式として実施 | 地方自治法施行令等で認められる場合に限る |
| 主な手続き | 公告、入札、開札、落札者決定等 | 根拠の確認、相手方の選定、見積り、価格確認等 |
| 事業者側の留意点 | 入札資格や仕様書、落札者決定基準等を確認する | 契約方法を自社で指定できず、価格や選定理由の確認も必要 |
※実際の手続きは、契約内容や自治体の規則によって異なります。
なお、自治体ではプロポーザル方式によって企画内容や実施体制などを評価し、契約候補者を選ぶこともあります。プロポーザルは事業者の選定方法であり、一般競争入札や随意契約という契約方法と、必ずしも同じ分類ではありません。
自社商品が随意契約になるかは誰が判断する?

最終的に判断するのは発注する自治体
随意契約が適用できるかどうかを決めるのは、商品やサービスを販売したい企業ではありません。
発注する自治体が、案件の内容や金額、法令・契約規則、相手方の選定理由、価格の妥当性などを踏まえて判断します。
そのため、企業側が「この商品は随意契約にできます」と一方的に断定するのは適切ではありません。
また、ある自治体で随意契約が認められた事例があっても、別の自治体や異なる案件で同じ結論になるとは限りません。
企業側がまず整理しておきたいこと
自社の商品やサービスを自治体へ販売したい場合は、まず次の観点を整理するとよいでしょう。
- 商品・サービスの内容: 何を提供し、どのような行政課題に対応するのか
- 想定する導入部署: どの部署が必要性を検討するのか
- 契約の規模・時期: どの程度の予算と導入時期が想定されるのか
- 調達方法: 一般競争入札を含め、どのような方法が考えられるのか
これらは、随意契約を成立させるためのチェックリストではありません。自治体への販売可能性を検討するための基本情報です。
具体的な営業の進め方については、関連記事「自治体への営業方法」で解説します。
随意契約についてよくある質問
Q. 少額随意契約はいくらまでですか?
契約の種類や自治体の区分によって国の基準が異なり、具体的な金額は各自治体の契約規則で定められています。2025年4月の国の基準改正を受けて変更した自治体もあるため、検討する自治体の最新の規則を確認する必要があります。
Q. 随意契約なら相見積もりは不要ですか?
必ずしも不要ではありません。随意契約でも複数の事業者から見積りを取る場合があります。見積りの取得方法や省略できる条件は、自治体の規則などによって異なります。
Q. 競合企業がいても随意契約になることはありますか?
あり得ます。ただし、競合の有無だけで決まるものではありません。どの法令上の類型に該当し、どのような事実関係があるのかによって判断されます。
Q. 随意契約を希望すれば自治体は対応してくれますか?
希望しただけで随意契約になるわけではありません。最終的な契約方法は、自治体が法令や契約規則に基づいて判断します。
自社の商品を随意契約で販売できる可能性は?
ここまで紹介したように、随意契約は競争入札とは異なる契約方法ですが、誰でも自由に利用できるものではありません。
一方で、自治体への販売方法を競争入札だけに限定して考える必要もありません。
自社の商品やサービスが行政課題に適合しているか、どの部署に需要があるか、どのような調達方法が考えられるかを整理することで、販路開拓の可能性を検討できます。
ただし、随意契約が認められるかどうかは、法令上の条件や契約内容、自治体の判断によって異なります。自社だけで判断するのは容易ではありません。
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「自治体へ販売したいが、競争入札以外の方法も検討したい」
「自社の商品やサービスが、随意契約の対象になり得るか知りたい」
「契約方法だけでなく、提案先や販売時期も含めて相談したい」
こうした企業様に対し、商品・サービスの特性や行政ニーズを踏まえ、提案先・販売時期・調達方法などの観点から可能性を整理します。
自治体への販売方法は、競争入札だけではありません。
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