「自治体に自社の商品を提案したいが、どの部署に連絡すればよいか分からない」
「担当者は興味を持ってくれたのに、予算がないと言われて話が進まない」
官公庁・自治体への営業を検討する企業の中には、こうした課題を抱えている企業も少なくありません。
官公庁営業が難しいと言われるのは、単に営業先が見つけにくいからではありません。自治体には、民間企業とは異なる部署の役割分担や予算制度、契約手続きがあり、商品への関心だけでは購入が決まらない場合があります。
さらに、こうした仕組みを知らずに民間向けの営業方法をそのまま持ち込むと、本来検討してもらえる可能性のある提案でも、適切な窓口に届かないことがあります。
一方で、自治体との取引方法は競争入札だけではありません。難しさの原因を整理することで、営業を始める前に何を準備すべきかが見えてきます。
本記事では、官公庁営業が難しいとされる4つの理由と、自治体への販売を検討する企業が確認したいポイントを解説します。
官公庁営業が「難しい」と言われる4つの理由
官公庁営業でつまずきやすい理由は、大きく4つに整理できます。
| 理由 | 営業活動で起こりやすいこと |
|---|---|
| 1. 担当部署が分かりにくい | 問い合わせても担当外と言われ、別部署を案内される |
| 2. 提案時期と購入時期が異なる | 商品への関心はあるが、予算や年度の関係ですぐには購入できない |
| 3. 調達方法が複数ある | 入札以外の方法を知らず、契約までの進め方を判断しにくい |
| 4. 民間向けの営業資料が伝わりにくい | 商品のメリットを説明しても、行政として導入する理由が伝わらない |
これらは、営業担当者の努力だけでは解決できない制度上の事情と、事前の調査や資料の整理によって対応しやすくなる課題が重なったものです。
それぞれの理由を具体的に見ていきましょう。
理由1|誰に営業すればよいか分かりにくい
代表窓口に問い合わせても、担当部署がすぐに決まるとは限らない
民間企業への営業では、購買部門や担当者へ連絡することで、比較的早い段階から具体的な商談に進める場合があります。
一方、自治体では部署ごとに所管する業務が分かれています。
例えば、職員向けの研修であれば人事・職員研修担当、防災用品であれば防災・危機管理担当、学校向けのICTサービスであれば教育委員会などが提案先の候補になります。
ただし、自治体ごとに部署の名称や担当範囲は異なります。同じ研修サービスでも、全庁的な職員研修と特定部署の専門研修では、検討する部署が異なることもあります。
そのため、市役所の代表窓口に問い合わせた結果、別の部署を案内されたり、複数の部署に確認するよう求められたりする場合があります。
こうした対応は、必ずしも営業を拒否していることを意味しません。行政組織の役割分担によって、最初の窓口では判断できないケースがあるためです。
部署名だけでなく、担当している業務を確認する
営業先を検討する際に重要なのは、自社の商品を必要とする行政業務は何かという視点です。
例えば、生成AIのサービスであっても、職員研修が目的なら人事部門、庁内業務のデジタル化が目的なら情報政策・DX推進部門が関係する可能性があります。
自治体の組織案内や業務分掌、各種計画、既存の事業内容などを確認すると、提案先の候補を絞り込みやすくなります。ただし、正しい部署を見つければ必ず検討してもらえるわけではありません。
営業先の調べ方や提案までの具体的な流れについては、別記事「自治体への営業方法」で解説します。
理由2|提案できる時期と購入できる時期が違う

商品が必要でも、すぐに予算を使えるとは限らない
自治体の会計年度は、原則として4月から翌年3月までです。自治体は予算に基づいて事業を進めるため、担当部署が商品に関心を示しても、直ちに購入できるとは限りません。
例えば、ある自治体に職員向け研修を提案したとします。担当者から「研修内容はよいと思います」と評価されても、次のような回答を受ける可能性があります。
- 「今年度の研修計画はすでに決まっています」
- 「新たな予算の確保が必要です」
- 「実施するとしても来年度以降の検討になります」
このような場合、話が進まない理由は商品そのものではなく、予算や事業計画の状況にあるかもしれません。
一方で、年度途中の購入が一律に不可能というわけでもありません。既存予算で対応できる案件や、必要に応じて予算措置が検討される案件など、状況は自治体や商材によって異なります。
「いつ提案するか」と「いつ発注されるか」を分けて考える
官公庁営業では、営業を開始する時期と、実際の購入・発注が行われる時期を分けて考える必要があります。
例えば、次年度の事業に向けた情報収集の段階で商品を紹介し、その後に予算や事業内容の検討が進み、発注が行われる場合があります。
逆に、すでに必要性と予算が整理されている案件では、比較的短い期間で調達手続きへ進む可能性もあります。
そのため、「自治体には何月に営業するのが正解」と一律に決めることはできません。
自社の商品が、どの事業で使われるのか。すでに予算があるのか、それとも次年度に向けた検討が必要なのか。こうした違いを把握することが重要です。

自治体営業の基本的な進め方は、別記事「自治体への営業方法」でも紹介します。
理由3|「自治体への販売=競争入札」だけではない
官公庁の調達方法は一つではない
「自治体に商品を販売するには、入札に参加しなければならない」と考える企業もあるかもしれません。
確かに、競争入札は自治体の代表的な契約方法の一つです。しかし、自治体との契約には、一般競争入札や指名競争入札のほかに、随意契約などの方法もあります。また、事業者の選定手続きとして、企画提案を評価するプロポーザル方式が採用されることもあります。
| 方法 | 基本的な特徴 |
|---|---|
| 一般競争入札 | 原則として参加資格を満たす事業者が競争に参加する |
| 指名競争入札 | 自治体が指名した事業者によって競争する |
| 随意契約 | 法令で認められる場合に、競争入札によらず契約相手方を選定する |
| プロポーザル方式 | 企画提案等を評価して事業者を選ぶ方式。契約方式そのものとは区別される |
どの方法が用いられるかは、契約の内容や金額、必要な条件などによって異なります。企業側が希望する方法を自由に選べるわけではなく、自治体が法令や規則に基づいて判断します。
随意契約という選択肢を知っておく
複数ある契約方法の中で、特に知っておきたいのが随意契約です。
随意契約とは、法令で定められた条件を満たす場合に、競争入札によらず契約相手方を選定して締結する契約です。
例えば、契約金額が法令・規則で定められた範囲内にある場合や、契約の性質・目的が競争入札に適さない場合など、適用が認められる類型があります。
ただし、随意契約は「入札を避けるために自由に利用できる方法」ではありません。適用要件を満たすことに加え、契約金額の妥当性や手続きの適正さなどが求められ、最終的な判断は自治体側が行います。
それでも、競争入札しか想定していなかった企業にとっては、自社の商品やサービスがどのような調達方法で購入され得るかを、改めて考えるきっかけになります。
随意契約の仕組みや一般競争入札との違いについては、別記事「随意契約とは」で詳しく解説します。また、企画提案による事業者選定については「自治体プロポーザルとは」も参考になります。
理由4|民間向けの営業資料をそのまま出しても伝わりにくい

自治体には、行政として導入する理由が必要
民間企業向けの営業資料では、売上向上や利益率改善、コスト削減などの効果を中心に訴求することがあります。
一方、自治体では、商品やサービスを導入することで、住民サービスや行政業務、政策課題の解決にどのようにつながるかを説明する必要があります。
例えば、企業向けに「人件費削減につながる」と説明している業務効率化サービスでも、自治体には「職員の事務作業を減らし、住民対応や本来の行政業務に充てる時間を確保する」という効果の方が、導入目的を伝えやすい場合があります。
| 民間企業向けの訴求例 | 自治体向けに整理した訴求例 |
|---|---|
| 人件費を削減できる | 職員の事務負担を軽減し、住民サービスに充てる時間を確保できる |
| 売上を増やせる | 地域の事業者支援や地域経済の活性化に役立つ可能性がある |
| 作業コストを下げられる | 事務処理の効率化と、限られた予算・人員の有効活用につながる |
もちろん、自治体にとっても費用対効果や経済性は重要です。民間向けのメリットを否定するのではなく、行政がその費用を負担する理由と結びつけて説明することがポイントです。
担当者が庁内で説明できる資料になっているか
自治体への提案は、最初に対応した担当者だけで判断が完結するとは限りません。上司への説明や内部決裁、予算・契約に関する確認が必要になることがあります。
そのため、商品の魅力を伝えるだけでなく、次のような情報を整理しておくとよいでしょう。
- どのような行政課題の解決につながるか
- 利用する住民や職員にどのような効果が見込まれるか
- 導入・運用に必要な費用はいくらか
- 誰が、どのような体制で実施するか
- 導入実績や効果を示す根拠があるか
- 継続的に提供・運用できるか
特に、これまで民間企業への販売を中心としてきた商品ほど、自治体の課題との関係を改めて整理する必要があります。
「良い商品だから購入してほしい」から、「行政として導入を検討できる理由を示す」へ。 この視点の違いが、官公庁営業における資料づくりの重要なポイントです。
官公庁営業を始める前に整理したい5つの項目
ここまでの4つの理由を踏まえると、自治体への営業を始める前に、少なくとも次の5つを整理しておくとよいでしょう。
| 確認項目 | 整理しておきたいこと |
|---|---|
| 1. 商品・サービス | 自治体に何を提供するのか |
| 2. 解決する行政課題 | 住民や職員、行政運営にとってどのような必要性があるのか |
| 3. 想定する所管部署 | どの部署が利用・導入を検討する可能性があるのか |
| 4. 予算・検討時期 | 既存予算で検討できるのか、次年度以降の検討になるのか |
| 5. 想定される調達方法 | どのような契約方式・選定手続きが考えられるのか |
この5項目が整理されていれば、少なくとも「どこへ、何を、どのような理由で提案するか」を検討しやすくなります。
ただし、同じ商品であっても、自治体によって担当部署や予算、調達の判断は異なります。また、制度を理解していても、必ず契約につながるわけではありません。
重要なのは、官公庁営業を難しいと感じたときに、単に営業件数を増やすのではなく、どの段階で話が止まっているのかを確認することです。
「部署が分からない」のか、「予算の時期が合わない」のか、「調達方法が分からない」のか。原因によって、必要な準備は変わります。

具体的な営業の流れについては、別記事「自治体への営業方法」で紹介します。
自治体への販売を検討するなら、準備段階から整理することが重要
官公庁営業には、部署の役割分担、予算、契約手続きなど、民間営業とは異なる難しさがあります。
しかし、すべてが営業努力ではどうにもならない問題というわけではありません。行政課題に合った提案先を考え、予算や時期を確認し、想定される契約方法を理解することで、検討の入口に立ちやすくなる場合があります。
中でも、自治体への販売方法を競争入札だけに限定せず、随意契約を含む複数の方法があることを理解するのは重要です。ただし、実際に適用できるかは個別の条件と自治体側の判断によります。
こうした準備を自社だけで進めるのが難しい場合は、自治体への販路開拓を支援する専門家へ相談する方法もあります。
自治体への販路開拓・営業方法についてご相談ください
株式会社ドリプラでは、官公庁・自治体への商品・サービスの販売を検討している企業に向けて、販路開拓や営業支援を行っています。
「自治体に営業したいが、どの部署へ提案すればよいか分からない」
「商品に関心を持ってもらえても、予算や調達の段階で話が進まない」
「競争入札以外の方法で、自社の商品を販売できる可能性を知りたい」
こうした企業様に対し、商品・サービスの特性や行政ニーズを踏まえ、提案先・販売時期・調達方法などの観点から可能性を整理します。
官公庁営業が難しい理由を理解することは、自治体への販路開拓を具体的に検討する第一歩です。
自社の商品やサービスを新たな公共市場へ展開したいとお考えの企業様は、まずはお気軽にお問い合わせください。